診療科概要

最近のがん診療の分野は腫瘍学(oncology)としてすさまじい勢いで進歩しています。特にがん化学療法(がん薬物療法)の進歩は著しく、有効性も向上した一方、適応や毒性など益々複雑になっています。分子標的薬など新しい治療薬も次々と登場してきました。がん治療においては、臓器や治療手段にとらわれず、全体的な視野で捉えて診療を行っていくことが重要となってきています。

2008年3月、杏林大学医学部に腫瘍内科として化学療法を中心にがん全体を扱う部門が立ち上がりました。がん診療は特に集学的チーム医療が求められてきており、外科・内科・放射線科・薬剤部・看護部・ソーシャルワーカーなど多くの部門の協力によって成り立ちます。腫瘍内科はそのような包拢的がん診療の中心的役割を果たすべく進めております。

杏林大学医学部付属病院では、診療科の枠を超えて最新の科学的根拠に基づいたがん治療を適切に提供する場として、2008年4月、がんセンターが開設されました。腫瘍内科はその中心を担う科でもあります。

当腫瘍内科では化学療法を主な治療手段として個々の患者さんに最も適した治療を提供します。また新しいより有効な化学療法の開発を目的とした臨床試験も積極的に進めています。化学療法は科学的根拠に基づいた適切な実施と心の通った診療が大切と考えています。

対症疾患

胃がん、大腸がん、食道がん、肝がん、胆道がん、膵がんなどの消化器がん、肺がんをはじめとする縦隔腫瘍、胸膜腫瘍など胸部悪性疾患、原発不明がんなどの難治がん、希少がん、その他悪性腫瘍一般

基本方針

  • 最新の科学的根拠に基づく標準的化学療法を実施します。
  • 腫瘍内科では難治性のがんが主な対象疾患です。外科、放射線科、緩和治療科、各臓器・器官の診療科などと密接に連携し、進行度、全身状態など個々の患者さんの状態を総合的に判断した上で、最も適切な治療法を選択 します。
  • がん化学療法ではまだまだ十分満足できる治療法は確立されていません。より有効な標準治療の確立に向け、治験・臨床試験を積極的に推進します。

外来治療センターについて

患者さんが日常生活を送りながら化学療法を続けたいというニーズに応えるべく、通院で化学療法が行える環境の整備を進めております。2016年11月、30床に拡充され、腫瘍内科が隣接して対応しています。がん専門の薬剤師や看護師など専門性の高いスタッフが常駐し、安全に治療を受けていただくよう進めています。

 

臨床試験・治験について

がん薬物療法ではまだまだ十分満足できる治療法は確立されていません。より有効な標準治療の確立に向け、薬物療法や免疫治療などの臨床試験や治験を積極的に推進しています。

  1. 進行消化器がんにおけるより有効な新規治療法の開発
  2. 高齢がん患者における適切な薬物療法の適応と評価のための総合的機能評価
  3. がん遺伝子に基づいたプレシジョン・メディシンの研究と実践
  4. 新規抗がん剤の早期開発と薬物動態研究
  5. 進行胃がん・大腸がんにおけるバイオマーカーを用いた個別化治療の推進
  6. 進行膵がん・胆道がんにおける新しい標準治療の確立
  7. 薬物動態・遺伝子多型を指標とした抗がん剤投与量の新しい調節法の開発

現在実施中の臨床試験・治験についてはこちらにてご確認ください。

症例数・実績

令和3年度 新規患者数

診断名 症例数
結腸・直腸癌 148
膵癌 133
胆道癌 48
胃癌 59
肝細胞癌 17
食道癌 45
消化管間質腫瘍 6
原発不明 13
神経内分泌癌 7
その他 63
合 計 539

地域連携内容

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の肝胆膵グループ、大腸がんグループ、および西日本がん研究機構(WJOG)の主要メンバーとして標準治療の確立に向けた取り組みを進めています。また「膵癌診療ガイドライン」や「胆道癌診療ガイドライン」などの作成委員会に参加し、がん診療のガイドラインの作成に向けた活動を行っています。

公的研究として、日本医療研究開発機構研究費(革新的がん医療実用化研究事業)研究による「切除不能膵癌に対する標準治療の確立に関する研究(研究代表:古瀬班)」その他分担研究者として国立がん研究センター研究開発費による「成人固形がんに対する標準治療確立のための基盤研究(JCOG)(大江班)」等の研究活動をしています。

がん薬物療法の安全・確実な実施体制を目指した地域連携の一環として、当院がんセンターの活動、近隣の医療機関とのネットワーク構築(三鷹キャンサーネット)、症例検討会・勉強会の定期開催、などに取り組んでいます。

近隣のみならず、遠方からもセカンドオピニオンの依頼に随時対応し、必要に応じて当科での治療を実施しています。

がん患者・家族のサポートおよびがん医療情報を発信するキャンサーネットジャパンや膵がん撲滅に向けた患者家族支援団体パンキャンジャパンの活動に協力しています。